1960年代後半、東京のテキヤにふとしたきっかけで出会い、 三年にわたって追い続けて撮った貴重な記録 まだ写真学生だったころ、地元十条の縁日を撮ろうと、前日にロケハンに 行った時だった。商店街から100メートルほどの長い道に不穏な群衆が動 いていた。時には荒々しくうずまく男たちの熱気と狂気と惰気。私はすぐ 自宅に戻りカメラを取り出し、現場にとって返した。 夢中でシャッターを切った。10分近く経った頃だろうか、私は男たちに かこまれていた。 「あんた、写真なんか撮ると半殺しなるヨ」 怒鳴るオバさんがいた。一発くるかと思っていると、親分格らしい一人が 「俺を撮ってくれ」と言いながら、体臭をむんむんさせて近づいてきた。 形勢逆転。それから私のテキヤ街頭写真師がはじまった。 渡辺 眸 撮影当時「アサヒグラフ」に掲載されて以来、40数年の時を超え、再び 立上がるテキヤの香り。 2017年12月22日まで六本木のZen Foto Galleryにて 「TEKIYA HITOMI WATANABE 渡辺 眸 写真展 香具師」開催。 |